Salesforce Experience Cloudとは|機能・導入方法・活用シーンのポイントを解説

写真:Salesforce Experience Cloudとは|機能・導入方法・活用シーンのポイントを解説 イメージ

Salesforce Experience Cloudは、顧客やビジネスパートナーとのデジタル接点を強化するプラットフォームです。CRMデータと連携したポータルサイトやコミュニティサイトを、コーディング不要で構築できるのが大きな特徴となっています。

本記事では、Experience Cloudの機能概要から実践的な導入ステップ、効果的な活用方法まで、初めて導入を検討される方にも分かりやすく解説します。

Salesforce Experience Cloudとは

Experience Cloudは、Salesforceのデータを活用してポータルサイトやコミュニティサイトを構築するためのプラットフォームです。外部ユーザーに対して安全に情報を提供しながら、CRMデータと連動した顧客体験を実現できます。

Experience Cloudの基本概念

Experience Cloudの最大の特徴は、Salesforce内のデータベースと連携し、外部ユーザーに安全に情報を提供できる点です。IDとパスワードによるアクセス制御により、クローズドな環境での情報共有が可能となるため、顧客やパートナーに対して必要な情報だけを適切な範囲で公開できます。

例えば、顧客には自社製品のサポート情報や注文履歴を提供し、ビジネスパートナーには販売資料や在庫データを表示するなど、それぞれのユーザーに合わせて情報を分けて提供できます。

従来のWebサイト構築との違い

一般的なCMSでWebサイトを構築する場合、顧客データとの連携には別途開発が必要になるケースがほとんどです。一方、Experience CloudはSalesforceのCRMデータと直接連携できる点が大きな違いです。

既存の顧客情報や取引履歴をそのまま活用できるため、パーソナライズされた体験をユーザーに提供できます。「ログインしたら自分の取引状況が見える」「過去の問い合わせ履歴を確認できる」といった体験を、大規模な追加開発なしで実現できるのがExperience Cloudの強みです。

Experience Cloudライセンス(エディション)

Experience Cloudには、Customer Community、Customer Community Plus、Partner Communityの3つのエディションが用意されています。それぞれターゲットユーザーと共有可能なオブジェクトの範囲が異なるため、自社の利用目的に合ったエディションを選択することが重要です。

【3つのエディションの違い】

エディション 主な対象ユーザー 主な利用目的 アクセス可能な主要データ
Customer Community 一般顧客 ヘルプセンター、FAQサイト ナレッジ、ケース(参照のみ)
Customer Community Plus 顧客(高度な権限) 会員制ポータル、管理画面 ナレッジ、ケース、カスタムオブジェクト、レポート・ダッシュボード
Partner Community 代理店、販売パートナー PRM(パートナー管理) リード、商談、キャンペーン、売上予測

エディションを選ぶ際は、まず「利用者にどこまでの操作(閲覧のみか、営業データの編集までか)を許可するか」という役割の範囲を明確にします。次に、利用者が「レポートやダッシュボードでの分析機能」を必要とするかどうかで、さらに必要な機能範囲に応じたエディションを絞り込みます。利用者の「訪問頻度(毎日か、たまにか)」を整理することで、無駄のない最適なエディションを選択できます。

Experience Cloudの主な特徴と機能

Experience Cloudには、効率的かつ効果的なポータル構築を支援する多様な機能が備わっています。この章では、特に押さえておきたい主要機能を紹介します。

テンプレート機能による迅速な立ち上げ

Experience Cloudでは、目的別に最適化されたテンプレートが複数用意されています。カスタマーサービス向け、パートナー向け、セルフサービスポータル向けなど用途に応じたテンプレートを選択することで、サイト構築の初期工数を大幅に軽減できます。

ブランドカラーやロゴの設定も容易で、企業イメージに合わせたデザインを短時間で実現できます。ゼロからデザインを起こす必要がないため、導入までのリードタイムが短縮されます。

エクスペリエンスビルダーのドラッグ&ドロップ編集

エクスペリエンスビルダーは、コーディング不要で視覚的にページを編集できるツールです。コンポーネントの配置やレイアウト変更が直感的な操作で完結するため、技術知識がなくても迅速なカスタマイズが可能です。

また、構築したサイトは標準でモバイルレスポンシブに対応しているため、PCだけでなくスマートフォンやタブレットからのアクセスに対しても、デバイスごとに最適化されたレイアウトを自動で提供できます。さらに、Salesforce上のナレッジやFAQを公開し、顧客が自己解決できる環境を整えることで、サポート部門の工数削減(ケースディフレクション)を強力に推進できる点も大きな特徴です。

Flow Builderによる業務自動化

Flow Builderを使えば、ユーザーの行動に応じた自動処理をノーコードで設定できます。たとえば、申込完了時に確認メールを自動送信する、特定の条件を満たした際に担当者へ通知を飛ばすなど、複雑なワークフローもプログラミングなしで実装可能です。

業務の自動化により手作業を削減できるため、運用コストの低減と対応スピードの向上を同時に実現できます。

堅牢なセキュリティ対策

外部ユーザーに情報を公開するポータルサイトにおいて、セキュリティは最も重要な要素の一つです。Experience Cloudには、データ暗号化、クリックジャック保護、多要素認証などの機能が標準搭載されています。

さらに、オブジェクトレベルやレコードレベルでの細かなアクセス権限設定が可能なため、「このユーザーにはこのデータだけを見せる」といったきめ細かな制御を実現できます。情報漏えいのリスクを最小限に抑えながら、必要な情報を適切に共有できる仕組みです。

Experience Cloudの導入手順

Experience Cloudを効果的に導入するためには、あらかじめ計画的な手順を進めることが大切です。ここでは、実践的な導入手順を解説します。

要件定義と設計

導入の最初のステップは、サイトの目的、ターゲットユーザー、提供する情報を明確にすることです。「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを関係者間で合意しておくことで、後工程での手戻りを防ぐことができます。

特に重要なのが、データ共有範囲とアクセス権限の設計です。どのユーザーにどのデータを公開するのか、Salesforceの共有モデル(外部共有設定など)を慎重に設計しなければ、意図しない情報の露出につながるリスクがあります。そのため、この工程には十分な時間をかけることが大切です。

コミュニティの構築プロセス

要件定義が完了したら、システム上の設定に進みます。

まず、Salesforceの[設定]から[デジタルエクスペリエンス]※1を検索し、機能を有効化します。次に、[すべてのサイト]から新規作成を開始し、用途に合ったテンプレートを選択して、サイト名やURLを設定します。

テンプレートの選択後、エクスペリエンスビルダーを使用して、ページのカスタマイズやコンポーネントの配置を行い、サイトの見た目と機能を整えます。

※1 「デジタルエクスペリエンスの有効化」を忘れると、メニューに作成ボタンが出てきませんのでご注意ください。

セキュリティ設定の実施

サイトの形ができたら、詳細なアクセス制御を実施します。プロファイルや権限セットを適切に設定し、各ユーザーがアクセスできるデータの範囲を明確にします。

次に、サイトの[管理]メニューから、作成したプロファイルなどを「メンバー」として登録します。これにより、特定のユーザーがサイトへログインできるようになります。また、共有設定を確認し、外部組織全体のデフォルト値などを見直して、内部データが不用意に公開されていないかを入念にチェックします。

テストと公開

公開前には、ビルダーの[プレビュー]機能で表示を確認するとともに、実際のテストユーザーで動作検証を実施します。複数のユーザーロールでログインし、意図どおりのページが表示されるか、アクセス権限が正しく機能しているかを検証します。

問題がないことを確認できたら、サイトを「公開」し、続けて「有効化」してください。公開後も継続的に利用状況をモニタリングし、ユーザーからのフィードバックをもとに改善を重ねていくことが大切です。

Salesforce Experience CloudとCommunity Cloudの違い

「Experience Cloud」と「Community Cloud」の関係について疑問を持つ方は少なくないでしょう。この章では、両者の違いとリブランディングの経緯を解説します。

リブランディングの経緯

結論から述べると、Experience CloudとCommunity Cloudは実質的に同じプラットフォームです。2020年にCommunity CloudからExperience Cloudへ名称が変更されました。

この名称変更は、Salesforceが「コミュニティ」の枠にとどまらない顧客体験全般を重視する方針を明確にするためのブランド戦略です。単なる情報共有の場ではなく、あらゆるデジタル接点を統合する「体験(Experience)」のプラットフォームとしての位置付けを強化する意図がありました。

機能拡張の方向性

名称変更後、エクスペリエンスビルダーの機能が大幅に強化され、より柔軟なサイト構築が可能になっています。特に、最新の「LWR(Lightning Web Runtime)」テンプレートの導入により、表示速度の大幅な向上や、より自由度の高いデザインが実現できるようになりました。

旧Community Cloudの時代から利用しているユーザーにとっても、既存のサイトはそのまま継続利用できるため、移行の心配は不要です。名称は変わりましたが、蓄積してきた設定やカスタマイズはそのまま活かすことができます。

カスタマイズにはプログラミング知識が必要か

Experience Cloudの導入を検討する際に、「プログラミングの知識がないと使えないのでは」という不安を持つ方もいるかもしれません。結論としては、要件の複雑さに応じて必要なスキルレベルが変わります。

標準機能で実現できる範囲

基本的なポータルサイトであれば、プログラミングなしで構築可能です。テンプレートとエクスペリエンスビルダーを活用すれば、ページの作成・編集・デザイン調整までをノーコードで完結できます。

Flow Builder(フロー)により、業務プロセスの自動化もノーコードで対応できます。そのため、「問い合わせフォームの送信後に自動返信メールを送る」「申込データをSalesforceに自動登録する」といった処理も標準機能の範囲内で実装可能です。また、複雑な入力画面も「画面フロー」を使えば、プログラムを書かずに作成できます。

開発スキルが求められる場面

一方で、独自の複雑な機能要件がある場合は、プログラミングの知識が必要になるケースもあります。具体的には、Apex(Salesforce独自のプログラミング言語)や、Lightning Web コンポーネント(LWC)といった技術を使った開発が求められる場面です。

例えば、既存のコンポーネントでは実現できない特殊な動作をするUIや、外部APIとの高度な連携を実装する際には、開発者のサポートをおすすめします。自社にSalesforce開発の知見がない場合は、認定パートナーへの相談を検討することをおすすめします。

Experience Cloudの活用方法

Experience Cloudは、さまざまなビジネスシーンで活用されています。ここでは、代表的な活用パターンを具体的に紹介します。

製品サポートポータル

製品マニュアル、トラブルシューティングガイド、ビデオチュートリアルなどを一元管理し、顧客が24時間365日、必要な情報にアクセスできる環境を提供するケースです。

Salesforceナレッジと連携することで、顧客がセルフサービスで問題を解決できるため、サポートチームへの問い合わせ件数を削減しつつ、顧客満足度の向上も期待できます。

ディストリビューター向け情報プラットフォーム

新製品情報、プロモーション資料、販売データをリアルタイムで共有し、販売パートナーの営業力強化と売上向上に貢献する活用法です。

パートナーごとにアクセス権限(共有セットや共有ルール)を制御できるため、競合するパートナー同士の情報が混在するリスクもありません。Salesforceのデータとリアルタイムに連携している点が、静的なファイル共有サイトとの大きな違いです。

オンライン予約・申込システム

Web面談予約、サービス申込、資料請求などをシームレスに処理できるシステムとしての活用も可能です。申込情報が自動的にSalesforceに登録されるため、手動でのデータ入力が不要になり、後続業務の効率化につながります。

Salesforce フローと組み合わせることで、申込後の自動返信メール送信や担当者への通知など、一連のワークフローを自動化できます。

ユーザーコミュニティの構築

製品ユーザー同士が情報交換できるフォーラム機能を提供し、ユーザー間のナレッジ共有を促進する活用法です。「Experience Cloud」の名称の由来どおり、ユーザーの声を収集し、製品改善やサービス向上のヒントを得られるという副次的な効果も期待できます。

活発なコミュニティはブランドロイヤルティの向上にもつながるため、長期的な顧客関係の構築に貢献する施策になります。

従業員向けナレッジポータル

外部ユーザー向けだけでなく、社内向けの活用も可能です。社内規程、業務マニュアル、FAQ、申請フォームなどを集約し、部門を越えた情報共有と業務標準化を促進するナレッジポータルとして活用できます。

特に、最新の「LWR(Lightning Web Runtime)」テンプレートを活用すれば、モバイル環境でも高速に動作する社内ポータルを構築できます。そのため、複数拠点を持つ企業や在宅勤務を導入している企業にとって大きなメリットになります。

まとめ

Salesforce Experience Cloudは、CRMデータと連携したポータルサイトやコミュニティサイトを構築できる強力なプラットフォームです。テンプレートやエクスペリエンスビルダーによるノーコード構築、Flow Builderによる業務自動化、堅牢なセキュリティ対策など、効率的なポータル運営に必要な機能が包括的に備わっています。

製品サポートポータルやパートナー向けプラットフォーム、オンライン予約システム、ユーザーコミュニティ、従業員向けナレッジポータルなど、幅広い活用シーンに対応できる柔軟性も大きな魅力です。

エス・ビー・エス株式会社 』では、Salesforceパートナーとして200社以上の導入実績を持ち、ニーズに合ったシステム構築と内製化に向けたご支援を行っています。 業務改善やDXを進めたい会社様にとって、Salesforceは今後ますます重要な選択肢です。ぜひお気軽にお問い合わせください。