赤帽首都圏軽自動車運送協同組合 様 導入事例
AWS環境に独自の統合システムを構築し
コスト削減、業務効率化、組合員の利便性向上を実現

赤帽首都圏軽自動車運送協同組合
理事長 長谷川 伸一 氏
副理事長 本川 清治 氏
赤帽首都圏軽自動車運送協同組合は、東京・埼玉・千葉・神奈川で運送サービスを展開しています。従来は拠点ごと・機能ごとにシステムを運用していたため、データ連携の面で課題を抱えていました。そこでエス・ビー・エスの支援のもと、オープンソースソフトウェア(OSS)を活用した統合システムをAWS上に構築。コスト削減に加え、赤帽特有の会計処理への対応、配車システムの精度向上を実現するとともに、組織全体の業務効率も大きく向上しています。
【課題】
- ・複数のシステムを拠点ごとに運用していたため連携が不十分
- ・ソフトウェアのアップデートのたびに発生するライセンス料金の抑制
- ・組合員の位置情報把握や配車システムの精度向上
【効果】
- ・AWS(クラウド)とOSSの活用による安定稼働とシステムコスト削減
- ・統合システムにより請求業務を本部で一括管理
- ・組合員はスマートフォン1台で受注から報告までの業務を完結
軽貨物運送業の特性にあわせた統合システムの導入

東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県で運送事業を展開し、約2,000人の組合員を擁する赤帽首都圏軽自動車運送協同組合。軽トラックによるドア・ツー・ドアの運送サービスを特徴とし、約9割の組合員が個人事業主として活動しています。さまざまな依頼をまとめて集荷するのではなく、依頼主の荷物だけを目的地に直接届ける方式により、配送距離の長短を問わず柔軟な対応を実現しています。
同組合では、請求・支払いを行う基幹システムに加え、GPSを使った配車システムや組合員管理システムなど複数のシステムを併用してきましたが、運用面で課題を抱えていました。
「拠点ごとに別々のシステムを使用して連携ができておらず、データが多重管理になっていました。また、クラウド環境を利用していたにもかかわらず、ミドルウェアのアップデートのたびに発生するライセンス料も悩みの種でした」と理事長の長谷川伸一氏は語ります。
そこで2018年秋頃から、より使いやすく拡張性のあるシステムへの刷新を検討。複数社に相談したなかから、オープンソースソフトウェア(OSS)のみで構成される統合システムをAWS上に構築するというエス・ビー・エスの提案を採用しました。
「導入から将来までライセンス費用が一切発生しないなど、優れたコスト効率が大きな魅力でした」と長谷川氏は評価します。2019年には東京都の助成金対象にも採択され、本格的なシステム刷新プロジェクトが始動しました。
組合員の声を丁寧に拾い上げ、独自の業務プロセスをAWSで実現

新システムの開発では、赤帽ならではの独自の業務プロセスをどう実装するかが課題でした。副理事長の本川清治氏は「当組合の業務は特殊で、一般的な事務処理の発想では仕組みが成り立ちません」と語ります。例えば、売上に対して手数料を自動計算し、支払いまで完了する「相殺」と呼ばれる仕組みは、市販ソフトウェアでは対応が困難でした。そこで開発初期にはエス・ビー・エスと週2〜3回の打ち合わせのなかで細部まで議論を重ね、汎用パッケージでは実現できない処理をAWS環境上に構築していきました。「当組合のやり方に一緒に向き合い、背景まで理解しながら取り組んでいただける会社は本当に稀です」と本川氏はエス・ビー・エスの姿勢を評価します。
配車システムでは、位置情報の精度が重要でした。組合員に案件を割り当てる際には公平/平等が非常に大切で、そのためにも正確な位置情報が不可欠です。当初はブラウザ上で位置情報を取得する設計を実装したものの、電波状況による断絶や、他アプリの使用によるデータ消失といった問題が発生。「これでは実用に耐えられないと判断し、ネイティブアプリ化に踏み切りました。この判断は正しく、プロジェクトの中でも最も大きな取り組みの1つとなりました」と長谷川氏は振り返ります。 また、組合員の要望から生まれた「ヘルプ」と呼ばれる仕組みもシステム化されています。「担当者が事故や体調不良、車両故障などで業務が継続できなくなった際、必要な情報を全組合員に一斉配信し、近くにいて協力できる組合員が名乗り出る仕組みです。非常に実用的で、業務継続の安心感にもつながっています」(長谷川氏)
さらに、災害時に備えた安否確認システムも導入。組合員は自身の無事やケガの有無、自宅の被害状況などを登録し、情報はリアルタイムで本部と共有されます。「現在では自宅からでも本部機能を立ち上げられる体制を整え、毎年9月と3月に年2回の訓練も実施しています」と長谷川氏は説明します。このような取り組みにより、現場と本部の連携を支える情報基盤を確立するとともに、複数の地域や自治体と災害時の協定を結び、緊急物資の輸送など社会貢献にも取り組んでいます。
アプリ開発力とAWSの安定運用で、事業と現場に好影響
新システムの導入により、組合員の業務スタイルは大きく変わりました。「昔は組合員が拠点まで出向く必要がありましたが、今では自宅で待機しながら案件を受けられるようになりました。スマートフォン1台で受注から報告まで、ほとんどの業務がこなせます」と長谷川氏が語るように、柔軟な働き方が可能になったことで、赤帽での働き方に関心を持つ人も増え、組合への新規加入にも良い影響が出ているといいます。
システムの安定性も大きく向上し、AWSという大手クラウドの活用によりサーバーや電源の管理が不要になり、セキュリティも強化されました。「以前のシステムは不具合が起きると数日間使えないこともありましたが、今では一時的に動作が重くなっても10~20分ほどで復旧できます」(本川氏)
そして、組織全体の情報共有力も飛躍的に高まったと本川氏は強調します。「組合員の多くは個人事業主で、大企業のような規模ではありませんが、情報の共有レベルはむしろ上回っていると感じます。たとえば、理事会で検討された内容が3日後には全国の組合員に伝わる、そんなスピードで動いています」
今後は顧客への提供価値をさらに高めていく方針で、荷物の現在地や移動状況を可視化する機能や、依頼をパソコンから直接入力できる仕組みの導入を検討中です。また、組合員のスケジュールを一元管理できる機能の構築も視野に入れています。
「今や運送業に限らず、コンピュータがなければ仕事になりません。このシステムがなければ、当組合の事業そのものが成り立たないでしょう」と長谷川氏は語り、今後もエス・ビー・エスとの連携を深めていく考えを明かしました。
企業概要
会社名:赤帽首都圏軽自動車運送協同組合
所在地:東京都台東区浅草橋3-8-5 VORT浅草橋 6F
事業内容:貨物軽自動車運送業、貨物運送取扱事業、共同受注・配車事業、共同購買事業、福利厚生事業、貸し切り便(時間極、月極め、距離制、等)、引越し、宅配など
組合員数:2,011人(2024年3月31日現在)
赤帽首都圏軽自動車運送協同組合
東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県を中心に、軽貨物車によるドア・ツー・ドアの運送サービスを展開する協同組合。組合員の大多数が個人事業主として加盟しており、一般顧客から法人まで多様な配送ニーズに対応している。引越、緊急配送、定期便など荷主の希望に応じた柔軟な輸送体制を構築するかたわら、各地域や自治体と災害時の協定を結び、緊急物資の輸送支援など社会インフラの一端を担う取り組みも行っている。
